このブログでは筆者が知っている範囲の有機合成反応に使う反応試薬の後処理に関する情報をまとめております。
とにかく実験者の安全が第一ですので、使ったことがない試薬は経験者を頼るか、所属組織の経験豊富な方に助言を仰ぐようにしてください。
このブログを過信してはいけません。
筆者は一切の責任を負いません。
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とりあえず有機合成反応の研究室で博士号を取得しておりますので、それなりには参考になるかと思います。
それでは本編を書いていきます。
汎用試薬の後処理については、以下のウェブサイトが参考になります。
名古屋大学大学院創薬科学研究科 天然物化学分野の情報をご活用ください。
【LAHの後処理(N,N,3N)】
LAHの後処理については、以下の手順に従います。
- 用いたLAHをN gに対してTHFで2~3倍に希釈し、アイスバスなどで冷却します。
- N mlのH2Oを加えます。
- N mlの15% aq. NaOHを加えます。
- アミノアルコールやジアミンを使用した場合は、3N mLのH2Oを使用します(アミノアルコールやジアミンの場合は2N mLのH2Oが推奨されます)。
- 発熱や急激なガス発生に注意しながら、生じた白色沈殿をガラスフィルターで減圧濾過します。
【DIBALの後処理】
DIBALの後処理手順は以下の通りです。
- 用いたDIBALのN mmolに対して0.7 * N mLのMeOHを慎重に加えます。
- 1.2 * N mLの30%ロッシェル塩水溶液を加え、30分間撹拌します。
- 有機層を30%ロッシェル塩水溶液で洗浄します(0.5 * N mLを2回、0.25 * N mを1回)。
- 合わせた水層をエーテルで逆抽出します(0.25 * N mLを3回)。
- 合わせた有機層を飽和食塩水で振り、その後乾燥させます。
※筆者の私見ですが、正直、これらは再現よくうまくいった覚えがありません。
希塩酸などで処理すると案外きれいに後処理ができるので、試してみるといいかもしれません。
【Grignard Reagentの後処理】
Grignard試薬の後処理手順は以下の通りです。
- 用いたMg試薬のN molに対して、saturated NH4Cl aqを適量加えます。
- エーテル溶液の場合:(150 ~ 175) * N mL
- THF溶液の場合:(100 ~ 120) * N mL
- 発生した沈殿を減圧濾過します。
上記の方法で後処理しても白い塩が溶けない場合は希塩酸を加えると溶けることが多いです。
意外(?)にもMg塩の後処理は厄介です。
塩基性にして処理をするのは避けた方が無難だと思います。
水酸化マグネシウムが出てしまってネチャネチャになります。
【その他の情報提供】
また、化学板のウィキには実験テクニックに関する貴重な情報がまとめられています。
DCCを使用した反応の後処理方法や金井研のマニュアルなども参考になりますので、一度ご確認ください。
【TLCの呈色試薬】
【一般的な試薬の後処理方法について】
液性で迷った場合はリン酸バッファー(pH 7)を使用して反応を停止します。本反応で後処理が必要な場合も、バッファーが最適です。
積極的に試薬を中和する場合には、それぞれ適切な化合物を使用します。基本的には使用した試薬とは反対の性質を持つものを選びます。
【酸化剤を使用した場合の後処理】
酸化剤を使用した場合は、チオ硫酸ナトリウム水溶液を使用して反応を停止します。例えば、H2O2、NaBO3、NBS、NCS、DMPなどの場合です。
特にH2O2の後処理では冷却と滴下に最大限の注意が必要です。フラスコから打ち上げ花火が上がる可能性があるためです。
【還元剤の後処理】
還元剤は多くの場合金属水素化物を含みますので、適切な酸性の溶液で反応を停止します。
【酸性試薬の後処理】
酸性試薬を使用した場合は、重曹水(NaHCO3 aq)で反応を停止し、必要に応じてNaOH aqを使用します。
(ただし、AlCl3のような例外もあります。塩基性で処理をすると、ねちょねちょになってとんでもないことになります)
【塩基性試薬の後処理】
塩基性試薬を使用した場合は、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、必要に応じてHCl aqを使用します。
これは有機金属試薬などの後処理で使うことでしょう。
【Cu塩のゴミの落とし方】
反応で銅を用いた場合、そのゴミが落ちにくいことがあります。
この際には、塩化アンモニウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜてアンモニウム水溶液を作成し、洗浄すると落ちが良いです。
残っていたゴミがCuであれば青く変色します。廃液は適切に処理します。
ただし、アンモニアは毒性が高いですので、取り扱いには充分注意してください。
【ホウ素系のゴミの処理】
【BH3系試薬を使ったときの後処理のコツ】
ヒドロホウ素化反応などでBH3系の試薬を使ったときは一度MeOHでクエンチした後に、B(OMe)3として留去した後に水を加えたり、ピナコールなどのアルコールを用いてエステルのエステル交換を行ったりすると、結構綺麗に行きますし、後処理が沼ことも少ないです。
ちなみに、BH3系試薬の反応性の強さは、BH3・THF>BH3・SMe2>BH3・pyridineの順番です。
意外と知られていないのではないでしょうか。
【Pdのゴミの処理】
Pdのゴミは1M HClで処理することができます。
Pd/Cのように注意が必要な物もあります。取り扱いが分からない場合は有識者に頼りましょう。
【チオ硫酸ナトリウムで出てくる硫黄の処理】
硫黄が問題となる場合には、亜硫酸ナトリウムでクエンチするか、塩基性に調整してからチオ硫酸ナトリウムを反応系に加えます。もう少しだけマシになることがあるようです。
【プロパンジチオールの後処理について】
プロパンジチオールの臭いが残った場合は、3M NaOHで水層に逃がし、アンチホルミンを加えます。
プロパンジオールが酸化されて匂いが消えるまで放置します。
その後、水層を塩基性溶媒に捨て、廃液タンクにアンチホルミンを入れます。
【筆者別記事】
・その他の役立つ情報
【ケムドロ関係】
ChemDrawの得する使い方:ショートカットキーと超基本機能
諸藤さんのブログ かなり役に立つ記事なので目を通すべし
構造式を美しく書くために【準備編】
個人的にはcorey_font.cdsのダウンロードをオススメします
【論文検索のためのツール】
Chemistry Reference Resolver
GoogleChromeだとWindow内にショートカットを作れるよ
Scifinderも活用すべし
【PDFからファイルから画像を切り抜くソフト(無料)】
「PDF-XChange Viewer」無料の定番PDFビューワー - 窓の杜
ダウンロードすべし。
Wordのスクショ機能でも代用可能。
【各種溶媒の極性に関する指標】
反応溶媒の選定やPTLCの展開溶媒の選定に活用すべし。
【有機溶媒の紫外吸収特性】
溶媒が光を吸ってしまって反応が行かないことがあります。思い当たる節があったら見ると良いでしょう。
【NMRの測定がうまくいかないとき】
役に立つ記事なので目を通しておくと良いでしょう。
【沸点換算ソフト(無料)】
http://www.fujiwhara.jp/h-bp-5.htm
【実験テクニック】
実験テクニックのまとめ作ろうぜ@化学板 Wiki
金井研 マニュアル
アルデヒドを分液操作で取り除く!
ジチアン合成とか過剰量のイミンの除去に使えるよ。使っている者は原理まで分かっておくように。
【耳寄り情報】
リンクが切れていたらごめんなさい。
・アルドール反応について
・有機金属化学入門
http://www.chem.nara-wu.ac.jp/~tanase/ClassesInfo/OMintroduction.pdf
・錯体化学の基礎
出典
http://www.chem.nara-wu.ac.jp/~tanase/ClassesInfo/
http://www.chem.nara-wu.ac.jp/~tanase/ClassesInfo/Coordination%20Chemistry%20Part1.pdf
http://www.chem.nara-wu.ac.jp/~tanase/ClassesInfo/Coordination%20Chemistry%20part2.pdf
・KIEについて
・NBOについて
・Large-Scale Applications of Transition Metal-Catalyzed Couplings for the Synthesis of Pharmaceuticals
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/cr100346g
・試薬や溶媒のカタログ
・酸化剤
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/catalog/pdf/catalog_0058.pdf
・ホスフィン配位子 アプリケーションガイド
・クロスカップリング反応のためのPd触媒・配位子アプリケーションガイド
<C-H活性化反応関連>
・芳香族炭素-水素結合の触媒的官能基化の新方法論の開発
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_252_01.pdf
・3価ロジウム触媒を用いる炭素-水素結合の直接誘導体化反応
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_252_02.pdf
・ニッケル触媒によるC–H結合官能基化
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_252_03.pdf
・高子価コバルト触媒によるC-H官能基化反応
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_252_04.pdf
<酸化的環化>
https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/ja511911b
<Reference>
[rakuten:book:17401205:detail]
[rakuten:book:17630541:detail]
[rakuten:book:18595002:detail]
[rakuten:book:19515646:detail]
[rakuten:book:17672678:detail]
[rakuten:book:12814198:detail]
[rakuten:book:14430086:detail]